ダイナースクラブの紹介と変遷に触れたあと、現在におけるクレジットカードとしての評価をまとめました。いいブランドなんですけど、ユーザーに不安を与えがち(笑)といったところ。
しかし総括すると、現在は日本において三井住友信託銀行が独占発行しており、(改悪を含む)改定がありつつもサービスは充実しており、使いがいのあるカードです。
日本におけるダイナースクラブカード
ダイナースクラブの始まりと変遷
2020年に公式サイトで特設の60周年記念ページが公開されました。
60年の軌跡 | おかげさまで60年、次の60年へ。ダイナースクラブ
ここに掲載されているクレジットカードとしての変遷と、ブランド運営会社をまとめます。
※ 画像の一部は記念ページから引用
1950年 アメリカはニューヨークのレストランがきっかけで設立
実業家マクナマラと友人の弁護士シュナイダーによって設立されました。レストランでの食事後、マクナマラは財布を忘れてきたことに気づき夫人に現金を届けてもらったことがきっかけで後払いの仕組みを作ったとされています。いわゆるツケですね。
やたら出来すぎたエピソードだと思いましたが、一部フィクションという話もあるようです。
1960年 日本ダイナースクラブ創設
1960年、日本におけるダイナースの歴史がスタートしました。㈱日本ダイナースクラブが設立され、アメリカのフランチャイズとして事業が開始。カードのターゲットとする客層は富裕層でした。なんと当初はお金の価値が違うため年会費は1,800円です。
1978年には、国内初インターナショナルカード発行されました。このあとJCBが1981年に国際展開を開始しています。この当時、大卒初任給が10万円で、ダイナースの年会費は6,000円でした。
2000年 世界のダイナースはCityグループへ
その後、1981年には米国シティコープが米ダイナースを買収しており、金融大手シティのグループ会社になっていました。
そこから遅れること約20年、2000年に米シティコープ子会社は日本ダイナースを買収します。ここで日本のダイナースは一度100%外資による運営になりました。
2008年 本国アメリカではディスカバーに買収される
しかし…。さらに買収は続きます。
2018年にシティは業績不振から北米のクレジットカード会社であるディスカバーにダイナースの事業を売り渡します。
今でもダイナースクラブカードの裏面にはディスカバーのロゴが入っており、相互利用が可能です。これ、北米では便利です。
2015年 日本では三井住友信託銀行グループが獲得
米シティグループの日本撤退後、ダイナースクラブのクレジットカード事業を引き受けたのは三井住友信託銀行グループの三井住友トラストクラブです。
現在の運営会社であり、日本においてダイナースの利用者はすべてこの会社の顧客となります。
各優待やサービスを企画・運用しているのも三井住友トラストクラブなので、私たちユーザーのダイナースライフはこの会社の手腕ひとつで変わってくるわけです。
ダイナースクラブのブランド価値
クレジットカードとしてのレビューは別の記事でも書いていますので、ここではブランド価値の評価についてまとめていきたいと思います。ちょっと定性的な話ですみません。
まず、日本で事業を開始した当初である、㈱日本ダイナースの時代は、明確に富裕層をターゲットにした入会資格を設けていました。
実際にダイナースを作れるのは自家保有の役職者や外資や大企業の管理職、医者・弁護士などに絞られており、その通りブランドイメージもステータスに繋がるものだったわけです。
しかし、2000年に日本ダイナースが外資であるシティグループに買収されて以降、サービスの改定が行われ、顧客サービスの廃止が増えました。
一方で三井住友トラストクラブの運営に切り替わったあとも、入会審査基準が少しずつ緩くなり、より門徒が広いイメージにシフトされてきました。
また記憶に新しい2018年11月には、男性ファッション誌GOETHE(ゲーテ)のウェブ版に掲載されたダイナースの広告に対しツイッターを中心に批判が集まりました。
記事内の座談会において「美人秘書」が「通販サイトのカード」や「カメラ屋さんのカード」など他社クレジットカードと利用者を乏しめるような発言がありました。品位≒ブランド価値を上げるためにお金をかけて広告を出しているのに、逆に下げるというお粗末な話です。
ダイナースファンとしてはちょっと残念な“炎上”でした。
ただし、それでもフィットする層には魅力的なサービスが提供され続けていることも付記しておきます。
だからこそ私は使っていますし経済的メリットも受けています。クレジットカード選びの本質はその機能と使い人のライフスタイルの掛け算で決まります。
最後にその運営企業である三井住友トラスト・ホールディングスについて触れていきます。
三井住友トラスト・ホールディングスについて
のれんの減損!今後は利益を増やせるか
ここから少しだけ企業会計のお話です。
ユーザー側ではなく、ダイナース側の話ですね。カードを使っている分には関係ない話ですが、頭に入れておくと参考になるかもしれません。
三井住友トラスト・ホールディングスは三井住友信託銀行を主軸とした企業グループで、その子会社としてダイナースを発行する三井住友トラストクラブが存在します。
そもそもダイナースクラブカードの事業を買収したのは、富裕層を多く抱えるダイナースの利用者との繋がりを作り、そこで資産運用を提案することが目的の1つでした。
ただしクレジットカードのビジネスはそこまで簡単なものではなく、買収時に将来の利益を見越して高く買った分(のれん)が、当初の目論見より重くのしかかっていたようです。
実際にはシステムを自社仕様にするためにかかった投資コストも想定以上だったようで、それを将来に渡って長く負担するより、一気に負担するという判断に迫られ120億円の減損処理です。
参考に2019年3月期のIR資料からスライドの抜粋します。
また、公表されているデータからも分かりますが、決して赤字事業というわけではなく、毎年10~20億円の純利益は出ています。しかし、事業の買収額が400億円強とのことなので、このペースだと投資額の回収までだいぶ時間がかかってしまいます。
ある意味、荷物を軽くしてもらった事業であるため、このあとはより収益を生む体質を作っていくことが求めらているでしょう(きっと銀行だからノルマに厳しい)。
今後のユーザーの裾野を広げるサービス拡大を期待
いろいろ書きましたが、およそ15年にも渡る外資企業による運営から、久しぶりに日本企業によるフランチャイズ運営になっています。
プレミアムカードのポイント還元率切り下げ、グローバルマイレージの縮小は残念でしたが、これで削減されたコストを上手に使って欲しいと思います。
ダイナースは今でも魅力的な優待が揃っています。ここは素直に評価してもいいと思います。
コナミスポーツクラブ・ポイントモール・チケットサービス・ハワイ施設優待・ゴルフ優待・各種イベント・カード付帯保険
22,000円~持てるカードとしては、本当によく頑張っていると感じます。
優待が豊富でポイントも貯まるいいカードであり続けてほしいですね。
以上、「ダイナースクラブとは | 日本で展開60周年!現在の評価」でした。
情報化社会への変化やクレジットカードの普及により、この流れは当然であり健全なのかなと思っています。利用者としては納得感のある変化に期待します。